メンター通信 第80号
発行日2010.9
市場が小さくなったときの経営戦略
八月初めのことですが、私は三重県中小企業家同友会の北勢支部の幹事会に参加するため、事務局へ向かいました。
こういう会合のとき、私は気が小さいのでいつも時間に余裕を持って行きます。
さすがに経営者の集まりで、2,3人の人が既におみえになりました。
そういう人との雑談の中から、色々な学びがあるものです。
時間になり一つ上の階の会議室へ向かう途中こんな会話が聞こえてきました。
「○○さんが、四日市にもっとくりだして、飲むようにならないと景気もよくならん」
いつも交わすような会話ですが、その時はなぜか疑問が湧いてきたんです。
以前私は、商工会議所の指導員の方に、平均給与というのがどのぐらいかを聞いたことがあります。
その時、指導員の方に教えてもらったのは
「平均給与というのは、あるんですが最近は実態とかなり食い違っているんです」
「正規社員か非正規かでも変わってくるし、その中でも開きがあります」
格差が付いているために、平均という言葉に意味を持たないということです。
この時のことが、頭をよぎりました。
「景気の動向」とは言いますが、それは平均値で自分の会社がどうかということとは無関係になってしまっているのではないでしょうか。
今確かに、以前に比べると厳しい状況が続いています。ところがその厳しさが会社によって全然違うのです。
随分回復したがまだ先が読めないというところは、かなりいい状態です。
本当に厳しいところは、今までやってきた業態では粗利益が低く、事業領域の見直しをしなければ、資金が底をついてしまうところもあります。これぐらい格差があるのです。
ランチェスター経営の竹田先生のもと勉強をしてきて、市場の原理というのが、少し解かりかけてきました。
市場の原理は、こういうことです。
最初人々が不便と感じているが見落としているものを誰かが見つけ出します。
- それを世に出し「こういうのが欲しかった」と思われると徐々にその市場が創られていきます。
- 市場が世間に認識されだした頃から、他社が参入をし始めます。他社の参入によって、益々認められて市場が大きくなってきます。
このとき、先行者は他社の参入のお蔭で、宣伝しなくても売れていく先行者利益が確保できます。
- 一通り行き渡ってしまうと、最初に手掛けたところは別の切り口で、商品を開発し始めます。
例えば、ポテトチップスは今ほど種類はありませんでした。2種類ぐらいだったでしょうか。それが、今は作っている人たちも覚えきれないほどになっています。
- この競争を繰り返し、戦略的1位が現れるか。人口の減少などで市場が小さくなるなどすると下位のものから順番に撤退してきます。その結果、上位2〜3社が業界で残ります。
では、どうすればよいのか。
現在の日本は、ほとんどの業界で市場が小さくなっていっています。
ですので、今の業界で上位に入ってどこで残れるかを見直す必要があります。
これがよく言われる存在意義というものでしょうか。
自分がどこで上位、できれば1位になれるかを見つけるには順序があります。
ま
ず最初は、細分化です。
業界を色々割ってみることです。例えば、地域(エリア)、会社の規模、男性女性、年齢層、生活の仕方などお客さんを観察しながら考えてみてください。
考えたら、紙に書くことです。
頭の中だけで考えていては、いつまで経っても具体化されないので図でも、文字でもいいので書いてみることです。
このときに陥りやすい失敗は、こんな小さい市場で食っていけるか。と思い考えることを止めてしまうことです。
1位を取ることが目的ですので、このときは市場規模のことは考えません。
次に攻略方法を考えます。勝ち残る方法です。
先日、同友会のランチェスター事例研究グループで、(株)マニーの研究をしました。
研究と言っても、カンブリア宮殿のビデオを参加メンバーで観て、感想を話し合うだけですが。
その中で、松谷会長が次のようなことを言っていました。
「この業界は、品質がよければ必ず勝てる」
このマニーという会社は、国内シェア、外科ナイフ50%・眼科根管治療器具40%しかも営業利益率は、37%、任天堂の30%より高い利益率なのです。
粗利益率と間違えるぐらいの数字です。
戦略目標の3つ(@商品またはサービスA営業地域B客層または業界)の要因の一つ目の商品は、針金から作る医療用のナイフです。
同じナイフでも、板の金から作るナイフはやっていません。2つ目の地域は、世界ということで番組の中では特定されてはいませんでした。
3つ目の業界は、眼科・外科と絞り込まれています。
この戦略目標に対して、松谷会長は、「この業界は、品質がよければ必ず勝てる」という信念から、世界一の品質を目指しました。
品質で1位になることでお医者さんが勝手にうわさを流し、売れていくという戦略です。
その世界一を作るのも、弱者の戦略そのものでした。
医療用ナイフの先を研究しているのは、世界で5人ぐらいだそうです。競争相手の少ない中で1位を取るのは容易であると番組の中で言っていました。
また漠然と世界一といってもだめで、細分化して一つ一つ「どこが世界一かデータを示す」とのことでした。社内会議で世界一が証明されなければ販売中止にするそうです。
「1位でなければ、自分のところが作る意味がない。他の会社に作ってもらった方がお客さんにとっては良い」と松谷会長は言っています。
1位を社長が指し示すことで、目標を持ち自信を持つ。ということで、先の見えない状況だからこそ、
まず社長がどの商品で、どこの地域で、どういうお客さんから指示を受けて1位を作るという戦略目標を立て、どうすればその業界で勝てるかという戦略を示しそれを達成するまで粘り強く全員で実行することです。
そのために戦略を本気で研究することだと思います。
ハウスクリーニング・キレイ堂
8月のお盆に、ランチェスター経営を尋ねてきました。
目的は3つあったのですが、その一つがキレイ堂というハウスクリーニングの社長にお会いすることです。
キレイ堂の社長は、香川さんという方で会社の名前の通りで綺麗な方でしたが、その経営戦略が素晴らしい。キレイ堂さんのことを知ったのは、戦略社長塾の塾長用のDVDというのがありまして、その中にたまたま受講生として出演されていたのです。
このときに講義をされていたランチェスター経営の稲田先生にお願いして、8月12日にお会いすることになりました。
(キレイ堂)
福岡は、全国的にも他人を家に上げて掃除をしてもらうことに抵抗感があるので、ハウスクリーニングでビジネスをするのは難しいそうです。
ハウスクリーンの業界は、不動産・賃貸から部屋の入れ替えなどのときに仕事を貰ったり、ビルメンテナンス会社から仕事を貰ったりするそうです。キレイ堂さんも最初はこういう仕事も行っていたそうです。
ところが、戦略社長塾に参加して稲田先生から次の3つの自由を奪われた仕事を止めるようにアドバイスがあってそれを決意したそうです。
1、時間 2、距離 3、値段
この3つを抑えられた下請けからの脱却です。
そこで、香川社長は営業を始めたそうです。
まずニュースレターに、顔を出し自分のことを表現して安心してもらうようにしました。
そして主婦の目線で、こういうことをして欲しいということを
工夫していきます。
こうして少しずつお客さんが増え、紹介が増えていきました。そして「こんな人がお客さんになってほしい」という客層を決めるわけです。
それからそのお客さんに応えるために、採用の基準を厳しくしていきます。
そのため採用は10人に1人。さらに採用してから100時間のトレーニングを行うそうです。
これで10人に1人。結局100人に1人しか残らないそうです。
それでもハウスクリーニング業界で差を付けるのは「人の質」とこだわり続けます。
そんなことが理由で、キレイコンシェルジュ協会というお掃除の資格を立ち上げます。
この資格は、プロ向けではなくて一般向けの資格です。お掃除を自分でやって欲しいという気持ちで立ち上げたそうです。
あわよくばその中から、人を採用したいという狙いもあったようですが、どちらかというとプロに任せなくてもいいことは自分でやってほしいという願いがあるということでした。
それでこの講座は県外でも行っているそうです。
今はさらに香川さんの勧める掃除用具を通信販売しています。
今までのハウスクリーニングのイメージを一新して成功した本当によい例です。
同席して頂いた稲田先生と帰りに話したのですが、「今ある業種とは全く別の価値を作りださなければならない」
日本ではほとんどの業界で、こういったことが必要だと思います。
一時間ほどの時間でしたが、12日は朝6時から起きて博多に行き翌朝帰ってくるというハードスケジュールでしたが、大変有意義な時間を過ごせました。
最初の一言で営業の成功不成功が決まる
最近営業を教えて欲しいということよく言われます。営業と一言で言っても、雑誌広告に掲載する方法、折込みチラシによる方法、
ダイレクトメールによる方法、ホームページによる方法と他にもいろいろありますが、最終的にはお客さんと1対1で話す技術が必要になります。
営業の教育・研修する前に次の質問を考えてください。
「我々のお客は誰にすべきか」
このことが決まっていないと先の工程が変わりますし、なんと言っても、効果性が全く違ってきます。
次に営業や販売と言うのはどういう原理で行われるかを教えずに結果を出せというのは、虐待というそうです。
ここまでは、教育です。次に訓練をしなければなりません。
教育と訓練の比率は1対2、訓練が重要です。中小企業はこの訓練の仕組みが出来ていません。
訪問営業の訓練を例に取りますと、最初の訪問は、原理の通りに情報収集から始めます。
例えば相手が社長の場合、経営の苦労話や独立したときの話など、相手が社員の場合は、どうしてこの会社に入ったかなど個人的な話を聞き出します。
こういった聞き出し方を訪問前に誰かを相手にして練習します。ロールプレイングなんてよく言います。
これを続けるとお客さんから商品への質問や見積もりをして欲しいということを言われるようになります。
ここまでは意外と簡単に実行できます。はがきやニュースレターを使うともっと効果的に関係性を築けます。
問題はここからです。
といいますのは、ここから「売ろう」という気持ちが入ってくるからです。
値段を聞かれたり、商品いて聞かれたりしたりするとほとんどの方が、ここぞとその商品について説明したり、見積もりに関する質問をしたりします。
でも営業を成功させるには、なぜその人が見積もりがいるのか、商品のことを知りたいのかを聞き出す質問を投げ掛ける必要があります。研修をしていて私はこの時の最初の一言に違いがあることに気付きました。この詳しい内容は「3ヶ月営業力強化講座」にてお伝えしたと思います。詳しくはパンフレットをご覧ください。
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